2006年2月1日水曜日

疾走する文体 - 舞城王太郎「煙か土か食い物」

 さっきはそこそこ揺れた、震度3くらい。昨日に続いての雨、雲のお陰で冷え込みもなし。この季節にしてはかなりの雨量だったのでこれが雪なら大雪になるところ。心身ともに正月ボケから抜けきらないのにもう2月が始まった。

 キワモノの多いメフィスト賞にあって珍しく傑物と噂の高い舞城王太郎を読み衝撃を受けた。口調がいつもと違うのはその影響。よく考えるとこれを読んでるのは全国で2、3人程度、無理してですます調で書くより心の声に近い調子で書く方がより日記として正確な記録になるというもの。

煙か土か食い物 舞城王太郎
 想像以上に凄かった何が凄いかって疾走する文体と苛烈な物語世界で目が回りプロットの瑕瑾すら気にならなくなってしまうくらい凄いもう完全にノックアウト。ただ賞を獲るための作品のせいか無理をして本格のギミックを組み入れてセルフつっこみを余儀なくされ本来の個性が少し殺されているのと、最初の文章のスピード感が最後まで維持されていないのがやや難点、だが後の作品では純度が高まっているのだろう。このチャッチャッチャッと書かれたような文章はかなりの推敲を経たものなのか一気に書き上げられたものなのか、いずれにしても怖い気がする。

 エルロイ「ホワイト・ジャズ」以来の衝撃の文体、まあこっちは翻訳なので正しく味わってる訳ではないが。

 故郷石川のお隣福井が舞台、笑ってしまう表現がありここに引用:

「東京が雪で福井が晴れ。こんな天気だってありうるのかと俺は意外に思う。いつも雨か雪が降っているような印象の福井なのに。」

これは珍しく短めの表現でこの後に続く以下の文が通常の調子。

「東京駅から新幹線で米原まで行く間ずっと空は曇っているが落ちてくる雪が雨に変わりその雨がいつしかやんで米原から特急に乗り換えて福井にはいると途端に曇り空が切れて晴れ上がってきてまるで魔法みたいだ。」

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