2010年7月29日木曜日

要再読、一見恋愛小説、その実ミステリー - 乾くるみ「イニシエーション・ラブ」

 幸せな"梅雨明け10日"の期間も12日間で終焉、今日は終日風が強く、雨が降ったりやんだり、気温も日中一向に上がらず16日振りの30度割れ、セミの声も切れぎれです。

 本日は以前から気になっていた作品で、昨日のコンサートの往き帰りで一気に読めました、が、帰宅してから再読(ざっとですが)する羽目に。

イニシエーション・ラブ 乾くるみ
 80年代の静岡を舞台にした恋愛小説、何の犯罪も起こりませんが背後にはミステリー的企みが、仕掛けに気付いた、と思ったのも束の間、再読して自分の読みが浅かったことに気付かされ、真相に背筋が寒くなりました。ただ昭和を知らない読者には種々の伏線の大半は理解不能なのでは。個人的には「山本スーさん久美子」がツボ、あと、"面白かった新刊"が「十角館の殺人」だったのにもニヤリ。

 巧緻な企みに舌を巻きましたが、作中にも出てくる連城三紀彦や泡坂妻夫がこのプロットを書いたのなら、さすが、の一言で済ませていたかも。

 登場人物の描き方(男・女共に)など、まるで男性が書いたとしか思えない内容、と思っていたら、何とこの著者、女性じゃなくて男性!「くるみ」なのに…、2重に騙された…。

 読後、つい「木綿のハンカチーフ」を口ずさんでしまい、歌詞があやふやになっていることにショックを受けました。

<追記>
<< 以下ネタバレにつき未読の方は飛ばして下さい!! >>
 A面の夕樹を「たっくん」と呼ぶのに無理があるのは当然ですが、B面の辰也の愛称が「たっくん」というのも微妙に不自然(普通なら「たっちゃん」か?)なことから、辰也の前にも「たくや」とかそんな名前のたっくんがいて、子供の父親もその"たっくん"だったと考えると、
「初めての相手がたっくんで、(中略) 二度目の相手もたっくん。三度目の相手もたっくん。これからずっと、死ぬまで相手はたっくん一人」
というセリフの怖さが倍増します。

2010年7月24日土曜日

アンコール素敵な爆演系 - 森口真司&オーケストラ・ダヴァーイのグラズノフ5番、シンデレラ

 今ツールの最終決戦、個人TTをテキストライブ観戦中、2位のアンディが、そしてマイヨジョーヌのコンタドールが出て行きました。

 またも晴れて猛暑日&熱帯夜、最高気温も35.8度と微妙に最高値を更新、この2晩は自宅の室温も32度を維持してます。梅雨明け以降の8日間、一滴の雨も無く気温は常に高めをキープ、そしてこの3日間は35度超、日記を付け始めての5年間では、最高の1週間を過ごしている気がします。

 最高のテニス日和ながら練習場所が無く、後輩が男女揃って名誉ある大会の決勝に進んだのでその応援へ、多摩の奥地まで青春18切符で向かいました。いつもながら、真夏は自分がプレーするより観ている方がアツイです。

 試合を全部観終わる前にアマオケの開演時間が近付いてタイムアウト、後ろ髪を引かれつつ、東京を横断し、スカイツリーの待つ錦糸町へ向かいました。

 聴いたのは過去爆演を聴かせてくれた(ラフマニノフ2番ショスタコ8番)ロシア圏音楽専門オケです。

7月24日(土) すみだトリフォニー
 森口真司&オーケストラ・ダヴァーイ グラズノフ Sym5番、プロコフィエフ シンデレラ抜粋
 最初のグラズノフは期待よりブラスが大人しめ、リズムのキレもやや甘く感じ、終楽章はそこそこハジけたものの、かなり物足りない感。後半のプロコ「シンデレラ」の実演は初めて、と言うか12時の鐘が鳴る部分しか耳覚えが無く、全曲から27曲も抜粋した1時間の長尺版が不安でしたが、プロのアナウンサー曽根純恵嬢のストーリーテリングが数曲ごとに入ったお蔭でダレずに楽しめました。ただ曲の大半は「ロミジュリ」と言われても違和感の無い金太郎飴プロコ節でした(笑)。Hrが前半より大分よくなり、Tp、Tbの吹きっぷりもややスケールアップ、階上のオルガン右脇に配した鐘とチャカポコを激しくぶっ叩く12時を頂点に盛り上がりましたが、それでも期待した爆演では無い感じ、ところがアンコールはレスギンカ、勿論パーカッションを筆頭に暴れまくり、最後に期待の爆裂サウンドが聴けて満足でした。

 明日はアマオケでシベ5を聴くかどうか迷い中です。

2010年7月15日木曜日

救いある翳 - 道尾秀介「シャドウ」

 曇りながら青空ものぞく熱帯夜&真夏日、日没後の西の空には三日月と金星が仲良く並んでいます。

 さすがにもうツツジの花は見かけなくなりましたが、ヒマワリは半月ほど前からあちこちで咲いています。

 時々通る道沿いに、庭の中の5m四方程が全部ヒマワリ、というお家があります。例年は数え切れない位の本数の2m以上ありそうなヒマワリが押し合いへし合い立っているのに、今年はパラパラとほんの数本しかありません、意図的にそうしたのか、自然にそうなったのかは分かりませんが、ちょっと淋しい感じです。

 ヒマワリと言えば「向日葵の咲かない夏」の道尾秀介、彼の第4作は同様に子供を主人公しており、第7回本格ミステリ大賞受賞傑作とのこと、ブラジルの喪に服していた頃に読み、これで夏の課題だった初期作完遂を果たしました。

シャドウ 道尾秀介
 ある父子家庭を軸に主人公の周りで起きる転落死など大小の事件が他視点で語られ、種々の伏線を回収する結末へと収束します。序盤掴み所の無いストーリーの背後にある絵が徐々に浮かび上がってくる構成は巧く出来ており、しっかり騙されました。ただ、お話を綺麗にまとめようとする意図が見える点と真相の意外性の点で「向日葵の咲かない夏」には一歩譲る印象です。

2010年7月10日土曜日

3人がセレブを目指したワケ - セレぶり3ラストステージ ~セレブは惜しまれつつ解散するものだ~

今土曜早朝、これから近場へ合宿に出掛けるところ、夜は急遽「セレぶり3」舞台版への参戦が決定したので、昨日のNBAFinalGame7の続きはまた明日の記事で。

<続き>
 合宿から戻りました。この日は雨予報が見事なまでに外れ、青空望める真夏日、しっかり朝から夕方までテニス出来ました。

 夕方少しだけ早めに上がって新宿へ、水曜申し込み&金曜結果発表と直前の無料招待抽選が当たっての観劇は、去年散々楽しませてもらった「セレぶり3」の舞台版、これが2作目とのことです。

7月10日(土) 全労済ホール スペース・ゼロ
 セレぶり3ラストステージ ~セレブは惜しまれつつ解散するものだ~
「セレぶり3」の3人で組んだユニットの歌が大ヒット!ホントにセレブになってしまった彼女達が、そもそもセレブを目指すことになったキッカケをそれぞれ回想する3つのストーリー、その前後に3人の生歌が入ります。ジョナの名前の由来やミチコマンがカープファンになった訳が明らかに!劇中3人は何役もこなし、中には強烈なキャラ(タニシの西田)も。グッチ・ジョナ・ミチコマンを生で見られて幸せ。

 早めに会場に着いたので、ロビーのソファで食パン+牛乳の夕飯をパクついていると、事務所関係なのか、TVで見かけたことのある女優(の卵)が次々と目の前に集まってきて挨拶&業界トーク(「先日の収録ではどうも…」)、近くで見るとさすがにみんなビックリするほど細くて可愛く、ボーッとなってしまいました。

2010年7月1日木曜日

本格度アップ、他の要素ダウンのシリーズ第2作 - 道尾秀介「骸の爪」

 ここ2日間続けて3時間睡眠だったせいか、昨夜はフェデラーの試合を見てるうちに意識喪失、目が覚めたらジョコヴィッチの試合(しかも内容イマイチ)になってました(涙)。

 今日から7月、ほぼ曇りながら気温は高めで30度弱に達する準真夏日、数日前関西時代のテニス仲間から「1日早朝テニス出来ないか?」と連絡があり(彼は神奈川在住!ここは茨城なのに…)、早朝貸し出している公営コートを確保し7-9時で練習、しかも何かの記念日らしくコート代無料!ラッキーでした。ただ膝の具合がイマイチなのにガッツリやったので後を引かないか少し心配。

 本日は昨日読了した本から、今年の課題図書、道尾作品の3冊目は、彼の第3作にして処女作「背の眼」(2010/6/23)メンバーの活躍するシリーズとしては2作目となる作品。

骸の爪 道尾秀介
 今回も主人公が山奥の仏所で怪奇現象を体験、それと時を同じくして不可解な失踪も起き、その謎に「背の眼」のコンビ(トリオ)が挑むことになる展開、前作に比べるとお話のスケール、ホラー度、キャラ読み度や人情話などの物語性等々、かなり減じてはいますが、その代わりロジックやトリックなど本格ミステリー度が上昇(ロジックを構成するために無理矢理感があったり、若干あざとかったりしますが…)、特に数多くの伏線の回収は見事、どっちの要素を好むかで評価は分かれそうです。

 偶然なのか意図的なのかは分かりませんが、前作を読んだ人なら「ここは真の怪奇現象なのか、それとも論理で解体される部分なのか」といった通常の本格とは別次元の推理も必要になる分、より謎解きが困難になる趣向にもなっています。

 次は最も期待する「シャドウ」です!