2006年8月20日日曜日

ガンジーとジーン - 伊坂幸太郎「重力ピエロ」

 厳しい残暑は続く、という予報も関東は適用外らしく、ギリギリ真夏日という程度。ただ実家の方は20日連続の真夏日で、昨日なんか37度あったとのこと。暑さで石川に負けるのはかなり悔しい…。練習もコンサートも予定が無く、壁打ちなどして地元でおとなしくした一日。

 バスケの世界選手権が開幕、日本開催だけに地上波で観られるのが嬉しいところ。アメリカが本気モードっぽいのも楽しみ。でも、まさか日本がらみの試合しか放送しない、ってことは無いでしょうねえ。

 死のロードの原因とは言え、3連覇という歴史的瞬間は見逃せないと、午後は高校野球決勝をTV観戦。熱い試合ながらさすがに18回までには決着がつくだろうと思ってたら、あれ?15回で打ち切り?数年前に延長規定が変わっていたとは知らなかったっす。

 今日も先日の試合の時に読んだ本から。伊坂週間の最後を飾るのは所期の目的だったこの高名な第4作です。

重力ピエロ 伊坂幸太郎
 普通人の主人公と一風変わったその弟、この「最強コンビ」が連続放火事件を追う、というストーリーを軸に、現在・過去のいろいろなエピソードが積み重ねられることによって魅力的な物語が紡ぎ出されます。例によって様々な伏線が結末へ向かって収束します。初期2作(オーデュボンラッシュライフ)の物語世界とのクロスオーバーも効果的。メッセージもはっきりしているし、語り口も(たぶん)巧くなってるので、より一般的に好評を博したのは解ります。が、ミステリー的見地からすると、個人的には最初の2作の方をより高く評価します。僕もガンジーを深く尊敬していますけれど。

 文庫化に際し加筆された挿話「燃えるごみ」は無かった方が良かったと思います。

2006年8月18日金曜日

個性派4人組 - 伊坂幸太郎「陽気なギャングが地球を回す」

 得意先の横浜銀行より3日間たっぷりご融資いただいて、セ・リーグ再開、と思ったんですが、期待に反し預金はたったの1つ。世の中甘くないです。高校野球はそのせいで死のロードに出てるかと思うと口惜しくてマトモには観ていませんが、昨日の智弁和歌山vs.帝京など、今年は呆れる程劇的な試合が多いですね。

 本日は久し振りにこれぞ真夏!という陽気、心なしかセミの声もより元気な感じ。ただ、いつの間にかツクツクボウシやヒグラシの声も混じっているのが「もう夏は終わるぞ」と言ってるようで物悲しいです。

 本日も帰省時に読んだ本から、映画化もされた伊坂幸太郎の第3作。

陽気なギャングが地球を回す 伊坂幸太郎
 やや変わった能力を有するギャング4人組の多視点(でも、やや神の視点っぽい)で、銀行強盗にまつわる物語がテンポよく語られます。勿論ヒネリはありますが、前作以上に伏線が公明正大なので、展開が読まれやすいのがやや難点かも。元より著者には隠す気が無いんでしょう。過去2作の物語とのクロスオーバーも少なめ。(この物語の田中さんは「オーデュボンの祈り」の田中さんとは別人ですよね?風体が違い過ぎるし…。) 一気に読める楽しい小品、といった印象です。

2006年8月16日水曜日

スタンダードナンバー、ノンスタンダード群像劇 - 伊坂幸太郎「ラッシュライフ」

 今日も小雨が残る天気で30度割れ、そのうちに夏が終わっちゃいそうで不安です。

 ジャズもロックも素人ですが、リンダ・ロンシュタットがネルソン・リドルと組んでスタンダードナンバーを歌った3枚のアルバム「ホワッツ・ニュー」「フォー・センチメンタル・リーズンズ」「ラッシュ・ライフ」は大好きで、収録曲をよく口ずさみます。自転車で長距離移動する時など、アルバム一つまるまる歌う程。ただ、どうも歌詞を覚えられなくて上手く歌えない曲がいくつかあり、3枚目の表題曲「ラッシュ・ライフ」もその一つ。

 この1週間、帰省と試合のお陰で移動時間が多く、伊坂作品を3冊読みました。どの作品からも著者のジャズと映画への愛が感じられますが、第2作ではまさにジャズがタイトルです。

ラッシュライフ 伊坂幸太郎
 前作とはうって変わって群像劇仕立て、紳士的な泥棒、未来を予言する男、殺人を計画する男女などの物語が交錯し、一筋縄では行かない巧妙なプロットが構築されます。また、くっついたり離れたりするバラバラ死体など、初期の連城三紀彦作品を思わせる幻想的な謎まであります。伏線がやや公明正大に過ぎる感もありますが、後半に物語が収束してゆくカタルシスは素晴らしいものがありました。ただ、巧さは感じますが衝撃度は前作より落ちるのも事実。

 氏の作品はほぼ全作がそうらしいのですが、登場人物など物語世界が「オーデュボンの祈り」と交差してるのも興味深いところです。

2006年8月8日火曜日

カカシ - 伊坂幸太郎「オーデュボンの祈り」

 近づく台風の影響か日中は気温が上がらず、連続真夏日はたったの5日で途絶。深夜に28度くらいあった都心ではお昼の12時頃に最低気温を記録してるのでは。

 本は文庫しか買わない/読まない主義なため、時流に3-5年くらい遅れます。その登場がここ5年の最大の事件とされる伊坂幸太郎も未読。今や古典とすら評価される「重力ピエロ」が待望の文庫化なったので、それを読むために、まずデビュー作を手に取りました。

オーデュボンの祈り 伊坂幸太郎
 いやあ、確かにスゴかったです。変な孤島を舞台に変な事件が起こるんですが、内容に上手く触れられません、とにかく読め、としか言えない感じ。ミステリー的部分に関しては書き方を変えればもっとキレが出るのに、とは思いますが、奇天烈で独特な物語世界に目が眩んで、そんなことはどうでもよくなってしまいます。純文学オンチで殆どミステリーしか読まないので定かではありませんが、フィクションの凄さ、をこれだけ感じさせてくれる作品は余り無いんじゃないでしょうか。

 8月上旬は伊坂週間になりそうな勢い。

2006年8月4日金曜日

飯森&東響の2番

 昨日同様、真夏の陽気でニコニコです。35度くらいになったのでは。

 今夜は飯森範親&東響による「復活」、このコンビでは数年前に5番を聴きましたが、やや弱音部の繊細さに欠ける反面、ダイナミックな部分では迫力ある演奏だったと記憶しています。2番はどうでしょうか。

8月4日(金) ミューザ川崎
 飯森範親&東京交響楽団 マーラー Sym2番
やや遅めのテンポを基調に、時にテンポを揺らして5番の時より細部を歌い込む感じの解釈でしたが、オケがそれを半分くらいしか音に出来ていない印象。また、肝心の強音部も弦管ともに少し音に厚みが欠ける印象でした、ホールと席位置のせいかもしれません。次のサントリー公演では、ずっと良くなると期待されます。ただ、バンダが舞台上に加わってHr11本、Tp10本となったクライマックスでは、(飯森氏自ら指導の)合唱の頑張りもあって、壮大な響きが聴けました。あとTbのトップと舞台裏のTpソロの柔らかな音色も印象に残っています。

 開演前の時間帯、ホールの建物前の広場でフジモトタカコというシンガーがストリートライブ(?)をやっており、なかなかいい感じでした。