2006年8月16日水曜日

スタンダードナンバー、ノンスタンダード群像劇 - 伊坂幸太郎「ラッシュライフ」

 今日も小雨が残る天気で30度割れ、そのうちに夏が終わっちゃいそうで不安です。

 ジャズもロックも素人ですが、リンダ・ロンシュタットがネルソン・リドルと組んでスタンダードナンバーを歌った3枚のアルバム「ホワッツ・ニュー」「フォー・センチメンタル・リーズンズ」「ラッシュ・ライフ」は大好きで、収録曲をよく口ずさみます。自転車で長距離移動する時など、アルバム一つまるまる歌う程。ただ、どうも歌詞を覚えられなくて上手く歌えない曲がいくつかあり、3枚目の表題曲「ラッシュ・ライフ」もその一つ。

 この1週間、帰省と試合のお陰で移動時間が多く、伊坂作品を3冊読みました。どの作品からも著者のジャズと映画への愛が感じられますが、第2作ではまさにジャズがタイトルです。

ラッシュライフ 伊坂幸太郎
 前作とはうって変わって群像劇仕立て、紳士的な泥棒、未来を予言する男、殺人を計画する男女などの物語が交錯し、一筋縄では行かない巧妙なプロットが構築されます。また、くっついたり離れたりするバラバラ死体など、初期の連城三紀彦作品を思わせる幻想的な謎まであります。伏線がやや公明正大に過ぎる感もありますが、後半に物語が収束してゆくカタルシスは素晴らしいものがありました。ただ、巧さは感じますが衝撃度は前作より落ちるのも事実。

 氏の作品はほぼ全作がそうらしいのですが、登場人物など物語世界が「オーデュボンの祈り」と交差してるのも興味深いところです。

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