2007年2月27日火曜日

ちょっと早い春限定 - 米澤穂信「春期限定いちごタルト事件」

今読んでる本が後20ページくらいなんですが、これから「翼の折れた天使たち」を観るので、取り敢えず記事のみ作成、感想はまた深夜以降に。

<続き>
 いま観た「翼の折れた天使たち」の主人公がはるか、そして今朝はマイナス3度まで行ったけれど、昼には14度とすっかり春の陽気、と言うことで(かなり強引)、春にちなんだ本を一つ。

 昨年度「このミス」ランクイン企画第4弾として、気になってはいたけれど、名前も読めず、性別も知らない米澤穂信作品を読むことに(「ほのぶ」と読むらしい、では女性か?)。ただ当該作品の「夏期限定トロピカルパフェ事件」は連作の2作目、よってその前の「春期限定」をまず手に取ることにした次第。(本当なら更にその前の「氷菓」や「さよなら妖精」も読まなくちゃいけないんだけど、まあ、これは同じシリーズでは無いそうなので…。)

春期限定いちごタルト事件 米澤穂信
 探偵としての才能抜群ながら、それを抑えて目立たない「小市民」をひたすら目指す男の子と女の子が、皮肉にも小さな事件に遭遇してしまう連作短編。不思議な絵、美味しいココアの謎など、典型的な「日常の謎」系作品、青春小説としても楽しく読めます。ミステリー的には唸るほどでもなく、最後のケメルマン風「狐狼の心」に至ってはやや無理があるなあ、と思っていたら、何と、ここで事前に仕掛けておいた地雷が爆発!この一点でマニアも納得かも。

 最後の「狐狼の心」もややそうなんですが、冒頭の「羊の着ぐるみ」に至っては、何故このタイトルなのかさっぱり判りません。読み方が未熟なのか…。

2007年2月15日木曜日

オラモ&フィンランド放響のケレン味シベリウス2番

朝から生暖かく、強い風、春一番か。最低気温の7度は平年の最高気温に近い値。気が付けば構内の梅(桜?)も咲き始めています。

 今夜はオラモ&フィンランド放響のシベリウス、オラモは数年前にバーミンガム市響とやはり2番を聴いていますが、とにかく煽る人という印象を持ってます。

2月15日(木) ミューザ川崎
 サカリ・オラモ指揮フィンランド放送響 ブラームス 悲劇的序曲、チャイコフスキー ロココ風の主題による変奏曲、シベリウス Sym2番
 2曲目のチャイコフスキーはチェロパートをフリューゲルホルンで吹く特殊バージョン、細かいパッセージが大変なのは勿論、金管楽器は弦楽器より音域が狭いので、音域的にもかなり大変な曲をナカリャコフは眉一つ動かさず(ウソです、後ろの席だったので顔は見えませんでした。)、軽々と柔らかに吹きこなしていました。アンコールは弦楽合奏と一緒にG線上のアリア。
 そしてメインのシベリウス、オラモの表現はメリハリをつけた抑揚の大きいもの。第1、2楽章を続けて演奏したことと、2楽章では中盤を抑え目にして、楽章の最後にクライマックスを持ってくる解釈が印象的。オケは小振りながら統一感のある音色で、弦が美しくHrが秀逸。そして前回同様ブラスを開放的に鳴らした終楽章ラストのコラール、ここだけ全開になったTpが凄い迫力でした。
 アンコールはまず「ペール・ギュント」より朝、そしてお約束の「悲しきワルツ」、どちらもケレン味たっぷりに聴かせてくれました。

 折角のシベリウスイヤーなので、オールシベリウスプロを、そして2番以外を聴きたかったところです。

<追記> 前回のバーミンガム市響も今回のフィンランド放響も白眉はラストのコラールでしたが、前回はTbを中心としたピラミッド型の分厚い響き、今回はTpの突出した貫通力が魅力と異なるサウンド、オケの特色の違いかなあと思い、FRSOとのFMライブを聴き直してみたところ、こちらは前回のCBSOと同じピラミッド型サウンド、やはりその日によって違うもんなんですね。

2007年2月4日日曜日

暖色系シベリウス2番 - 新田ユリ&オーケストラ エレティール

 あちゃぁ、シャラポワ負けちゃいましたね。彼女のコンディションはさておき、相手のセルビアの娘の球のスピードはハンパじゃなかったっす。

 朝に見た天気予報の「立春に相応しく3月中旬の陽気」は無残にも外れ、肌寒い一日(それでも平年並み)。強かった風も、とても春一番とは呼べそうにないシロモノ。

 午前中テニス、午後アマオケと典型的休日、出掛けに招待ハガキをポーチに入れる際、別の招待ハガキを発見、な、な、何と先日招待券を見つけられず断念したエルガープロのもの。ショック…、忘れない様に事前にポーチに入れておいたのに、そのことを忘れて部屋を探し回ったらしく、バカさ炸裂。

 今年はエルガーイヤーであるとともに、シベリウスイヤーでもあります。という訳で今日のメインはシベリウス。

2月4日(日) 杉並公会堂
 新田ユリ指揮オーケストラ エレティール ベートーヴェン フィデリオ、サン=サーンス VnC3番、シベリウス Sym2番
 前半は守備範囲外のため半分意識が飛んでました。ソリストの宮川正雪氏は拍手に応えバッハっぽいアンコール。そして後半、キレのあるコンマス率いる弦セクションと木管はそこそこまとまっており、シベリウスを得意とする新田氏の棒の下、暖色系の響きを形作っていました。金管ではHrとTbがよく鳴っており、終楽章再現部へ向けての豪快な盛り上がりが印象的。アンコールもシベリウス、マイナーな弦楽曲とフィンランディアの2曲、2番のラストもそうだったのですがフィンランディアの最後の一音、弦だけが最後に一瞬残るサウンドがキマってました。

2007年1月29日月曜日

広辞苑とフィクション - 伊坂幸太郎「アヒルと鴨のコインロッカー」

 朝から暖かめ、ただ午後は気温が上がらず。本日は試合、サックリ負けて、今年に入って2戦連続予選の初戦負け。まあ、冬場は例年勝てないので結果はいいとしても、パフォーマンスレベルが低く練習不足を痛感。

 「小説」、「ノベル」、「フィクション」は本来同じ物を指すのかもしれませんが、日本の小説の主流が一時私小説になった影響でしょうか、「フィクション」というと荒唐無稽なものもOKだけど、「小説」というと虚構に仮託して真実を語るにせよある程度リアリティを重んじる、と何となく違った語感を感じます。自分だけの感覚かもしれませんが。

 「事実は小説より奇なり、されどフィクションはそれを遥かに凌駕する。」という言説もアリかと思いますし、伊坂幸太郎の処女作「オーデュボンの祈り」ではまさにそれに近い感じを受けました。

 彼が過去4作で一貫して主張していた「人間の命は他の生物の命に比べて特別なものじゃない、むしろ邪悪な分だけ価値が低い」というテーマ、それが前面に出た第5作を読みました。

アヒルと鴨のコインロッカー 伊坂幸太郎
 「ペット殺し」の事件を幹として、数人の若者を巡る物語が2つの異なる時間軸で語られ、それが悲しくも美しい収束へ向かって突き進みます。タイトルが絶妙。またお約束の他作品とのクロスオーヴァーは少なめ。この小さな宝石のようなきらめきを持つ物語は青春小説としても読めますし、「重力ピエロ」と同様、初期作より小説としては巧くなっていてより広い読者に支持されるでしょう。ただ、ミステリーマニア的には却って物足りなさを感じるのも事実です。

 「きらめき」って「燦き」だと思ったんですが、変換すると「煌き」しか出てこなくて、しかも広辞林、いや広辞苑もその字しか載ってません。でもこれだとイメージが違うのでひらがな書きにしました。まあ「燦き」だと「かがやき」とも読まれてしまうか。

 広辞苑で小説、ノベル、フィクションの違いでも調べてみます。

2007年1月25日木曜日

コバケン初の9番

 朝はかなり冷え込みましたが、日中は昨日以上のポカポカ陽気。

 今夜は日フィル音楽監督の集大成、コバケンが初めてマーラー9番に挑みます。帰りが遅くなるので記事のみにて。

<続き>
 戻りました。今夜は星が綺麗です。予想とはかなり違う演奏でした。

1月25日(木) サントリーホール
 小林研一郎指揮日フィル マーラー Sym9番
やや遅めのテンポで各声部を明確にした音作りで、想像よりずっと端整な演奏。特に弦はボウイングを工夫し音を粒立たせる表情付け、音にキレがあり、ピッツィカートの強調と併せ印象的。最初は冴えなかったけれど段々調子の出てきたHrを始め、ブラス陣もまずまずの出来。
 終楽章の前半でこそコバケンらしいうねりが炸裂してはいましたが、第3楽章後半などはオケの方が先走りする位で、トータルとしてはビックリするほど地道で明晰な演奏でした。特に終楽章後半のクライマックス、弦とのバランスを取ってブラスを抑え気味にしたのは驚きでした。(個人的には爆発して欲しかったのですが。)
 本日の私的MVPは第1、第2楽章の最後の音など、数々の弱音を見事にこなした美人ピッコロ奏者です。

 時にショーマン的な姿勢が取り沙汰されるコバケンですが、初めての曲ということもあってか、思ったより謙虚に真摯に楽譜と向き合っていることを感じさせられた一夜でした。(とかなり生意気な物言いでスミマセン。)

2007年1月7日日曜日

漫画芸術家? - 恋の門

 年末に続き爆弾低気圧第2弾が来襲中、ただ関東地方の雨は昨日まで、本日は晴れ、風が徐々に強まる中、午前中はテニス、午後にブラスを聴きに行こうと思ってたんですが、雑用が残っているので自重。

 本日も年末に観た映画から。鬼才松尾スズキの初監督作品、演技者「マシーン日記」のオチに感動して以来、彼を尊敬してるので、ちょっと期待です。

恋の門 <'04 日>
 オタク的な面を持つ者同士の異種格闘技的な恋愛を描いた作品、これも原作はコミックとのこと。映像的にもギャグ的にも部分部分は面白かったです。が、終わり方はスッキリ感が足りない感じ。原作がある以上仕方の無いところかも。次は監督自身の作品の映像化に期待です。あと半分も気付いていないとは思いますが、芸能界と漫画界から大勢のカメオ出演が凄いです。

2006年12月20日水曜日

ショスタコイヤーの掉尾、デプリースト&都響の8番

 冷え込みは意外と甘く零度前後、やはり今年の冬は暖かめ、それと関係してか雲は多めで、綺麗な夜空を見上げる日も少なめ、先日のふたご座流星群も雲で遮られたような。

 デプリーストは常任になる以前、都響とのショスタコーヴィチ(11番?)が評判だったと記憶してますが、マーラーしか聴いたことがありません。マーラーでは余りベタつかず、ガッチリと響きを構築してゆく印象がありますが、ショスタコはどうでしょうか。

12月20日(水) サントリーホール
 ジェイムズ・デプリースト指揮都響 シュニトケ ハイドン風モーツァルト、ショスタコーヴィチ Sym8番
 前半は世間的にはモーツァルトイヤーであることを慮っての選曲か。小編成の弦楽に都響奏者による2台のVnソロをフィーチャーした曲、暗転した状態で演奏しながら奏者が袖から入ってくる冒頭から、最後には奏者が出て行き無音になっても指揮者だけ棒を振り続けるラストまで、予想を上回る珍妙さでした。
 後半のショスタコ、デプリーストの筋肉質なマーラーから硬質な響きを予想してましたが、全くそれに反し、柔らかめの響きと各フレーズにかなり表情を付ける解釈に驚き。弱音部での表現の豊かさでは功を奏した反面、2、3楽章では少し鋭さに欠ける印象。また1、5楽章の最強奏の際は金管(特にTb)はインバルの11番の時より吹いていてかなりの迫力でしたが、壮絶、というレベルには達しない感じ。一方弦はffではそこそこ鳴ってましたが、かなり抑えさせられたppがやや苦しかったかも。柔和で表情豊かな8番、これはこれで一つのアプローチではあるのでしょう。

 身勝手な期待をしたため、少し肩透かしを食らった感がありました。奇しくもこれから帰ってエアチェックするのはスヴェトラーノフ&LSOによるショスタコ8番、その間に録画されてる筈の亀田兄弟でも見ます。

<追記> 「掉尾」って「とうび」では変換してくれないんですね(正しくは「ちょうび」、たぶん)。まだ慣用読みとは認められてないのか…。

2006年12月16日土曜日

緩徐楽章好きの大物 - 松田理奈さんのVn

昨夜観た極真全日本大会、田中健太郎の負けは意外でしたが、内田の頑張りは見事。

 京都出張では結構ご馳走になったため、2日で2kg増加! 懸念していた通りの自己最高体重(涙)、この土日は非常事態減食モードです。

 そこそこの陽気に恵まれ、午前中はテニス。午後はブラスの「ローマの祭」を聴く予定でしたが、コバケンとのチラシ写真で気になっていたヴァイオリニストのイベントが同じ時間帯にあることを今朝発見し、そちらに行くことに。我ながら情けない位ミーハーです。

 渋谷タワレコで聴いたのは松田理奈さんのヴァイオリン、CDデビューを記念してのイベントとのこと。見た目はフツーの可愛いお嬢さんで、かなりの話し上手、トークでも演奏でも全く物怖じするところ無く、大物を感じさせます。

 トークを交えての4曲、協奏曲ではヴィルトゥオーゾ的な両端楽章より緩徐楽章が好きと語った通り、緩徐部分では深みのある音色で表情豊かに魅せてくれました。特に後半のイザイの無伴奏曲(ディエス・イレが出てくるもの)とツィゴイネルワイゼンがなかなかに圧倒的で、通常30分ほどのイベントが45分にも及ぶ贅沢なご馳走でした。

 明日はアマオケのマーラー5番、これが今年のマーラー納めかも。

2006年12月3日日曜日

ヤンソンス&コンセルトヘボウのゴージャスマーラー1番

 いやあ、昨夜のK1GP決勝大会、P.アーツには感動しました。泣きそうなくらい。また今やK1の「レジェンド」であるバンナ、ホースト、アーツを下してのシュルトの優勝は非常に価値がありますね。

 マイナス1度以下まで冷え込む中、上記の興奮も冷めやらぬ中、1時間半睡眠で早起きして午前中はテニス、午後早めに上がって、すみだトリフォニーへ。ロストロポーヴィチ&新日のショスタコ8番、チケットがが余っている人から安く譲って貰う作戦開始です。

 しかーし、大野&新日のショスタコ4番の時は上手くいったこの作戦も本日は失敗、当日券は全種ありましたが、最安席6000円と元々定価がバカ高いため断念、スゴスゴとサントリーへ移動しました。

 夜は30日に続きヤンソンス&RACO、これまた別のリッチな後輩から譲り受けたチケット、これで二人の後輩からそれぞれNYPとRACOを1枚ずつ、計4公演も譲って貰ったことになります。何たるシアワセ、何と出来た後輩達。

 不明にしてオスロフィルと来日した頃のヤンソンスを注目していなかったので、実は彼のマーラーの実演は初めてです。

12月3日(日) サントリーホール
マリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管 モーツァルト PC25番、マーラー Sym1番
 前半は守備範囲外、第1楽章、ピアノの入りまでが長いのに驚きました。盛大な拍手に応え、出入りが駆け足なのとお辞儀が180度と超深いのが印象的だったソリストの内田光子女史は、アンコールにシューベルトを雰囲気たっぷりに弾いてくれました。
 そしてお目当てのマーラー、たまに個性的な表現はありますが、ヤンソンスの解釈は思ったよりもテンポやバランスをいじらず、ある程度オケに任せる印象で、音楽がよく流れてゆきます。それでもコンセルトヘボウ管はマーラーの語法は心得ており、オケ任せでもマーラーらしさは余り希薄になりません。ただ、第3楽章の後半は強弱とテンポにかなりメリハリをつけ、少し編曲まで入ってました。また終楽章の緩徐部分もそれなりに粘ってました。
 オケは今日もHrが存在感たっぷりで、特にトップ奏者のエッチっぽいヴィヴラートと全員強奏時のスラー気味のベタ吹きが見事。弦はそれ程の音量では無いれどそれなりの迫力、木管陣は今日も伸び伸びです。クライマックス、一流オケでも貧相になりがちな最後のTpのハイトーンもバッチリの迫力でなかなかゴージャスに終わりました。ただ、正統なマーラーとはちょっと違うでしょ、って感じではあります。Hrの起立は無し、アンコールも無し。

オスロフィルとの同曲の際は、お得意の悲しきワルツやハイドンのセレナードあたりアンコールをやったと思うのですが…。

2006年11月30日木曜日

ヤンソンス&コンセルトヘボウのメロディックなハルサイ

 一日晴れたと思ったらもう雨、昨年の11月は雨が少なく、平年の半分以下の降水量でしたが、今年は平年の倍近いんじゃないでしょうか。

 日中は仕事でビッグサイト、中に入るのは初めて、思ったより広くて迷いました。午後外に出たときには雨はすっかり上がって陽が射してました。

 先日のみなとみらいホールで、マゼール&NYPのゴールド会員券をタダ同然で譲ってくれたリッチな後輩に遭遇、本日のコンセルトヘボウも用事で行けないとのことで、またもタダで譲ってもらうことに。いい後輩を持ってシアワセです。

11月30日(木) サントリーホール
 マリス・ヤンソンス指揮ロイヤル・コンセルトヘボウ管 ドヴォルザーク Sym9番、ストラヴィンスキー 春の祭典
前半の「新世界」は微妙に守備範囲外なのでよく判りませんが、ヤンソンスはテンポは揺らすわ、時に強弱を極端につけるわ、普通と違うパートは強調するわで、かなり個性的な解釈だった気がしますが、オケはそれを十分心得ている感じ、嬉々として表情豊かな響きを紡ぎ出していました。
 後半のハルサイ、激しく暴力的なイメージがあるこの曲を、ヤンソンスはリズムの鋭さよりもメロディを歌わせることを重視した様な解釈で、響きの厚さの割には柔らかな表現でした。特に木管群が伸び伸び歌っているのが効果的。テンポも遅いパートではやや速め、速いパートではやや遅め、たださすがに最後だけは減速と急加速を駆使してケレン味たっぷりに盛り上げていました。要所でベルアップする(しない人もいましたが)Hrが迫力でした。
 アンコールは舞曲を2つ、よく耳にする曲と聴いたことの無い曲。どちらもドヴォルザークのスラヴ舞曲かと思ってましたが、よく聴く曲の方はブラームスのハンガリー舞曲とのこと、弦セクションがガンガンきてました。