2009年9月28日月曜日

Just wispy - ジェレミー

 伊達、13年振りツアー優勝!しかし今や小さな大会なら優勝しても驚かなくなっています。

 まずまず晴れてギリギリ夏日、ただ午後からは雲が出てきて下り坂の様相です。昨日の合宿の影響で朝目が覚めると全身が筋肉痛、そこにこの半年悩んでいる左膝の痛み(これは昨日の午後から)も加わってすぐに起き上がれなかった程、夜になった今でも少し動くことすらシンドイです。

 日記を始めた数年前は「テニスプレーヤーがテニスで筋肉痛になるのは有り得ない」と書いていたのに今やこの体たらく、辞め時が近いようです。

 大好きな青春映画は、と問われれば、すぐに出てくるのは「おもいでの夏」<'71>と「ジェレミー」<'73>です。知人から「ヒロインの魅力を含めお奨めの青春映画を」と訊かれて後者を挙げましたが、高校の頃に1度、大学院生の頃に1度観たきり、しかも2度目の時は一緒に観た(かなり年下の)娘に「こんなのが好きなの?」と鼻で笑われた苦い経験あり(笑)。

 人に薦めておいて自分が急に観たくなり、ただ「おもいでの夏」はそこそこメジャーなため録って保有してますがよりマイナーな「ジェレミー」は手元に無し、そこで無線LAN使い放題のホテルに逗留したベルリン滞在中にネットでGET、日本語字幕はありませんが、英語字幕は付いていたので勝手知ったる映画なら問題無さそうです。

ジェレミー <'73 米>
 典型的なボーイ・ミーツ・ガール、改めて観ると自主映画っぽい作り、実際かなりの部分が16mmによる撮影とのこと。これがデビュー作となるG.オコーナー、初めてジェレミーの音楽に触れるシーンの表情が特に素晴らしいです。主役のR.ベンソンとG.オコーナーがそれぞれ歌う主題曲と挿入曲はどちらも素敵なので自分で歌えるようにしたかったのに、歌の時だけ字幕が出なくてガッカリでした。最初に観た時は「特に何もしなくても2人で過ごす時間が幸せ」というセリフが心に残りましたが、今回は"I'm just wispy."なるセリフが印象的、"wispy"とは「静かにしみじみと感じる幸せ」みたいな意とのこと。
<< 以下ややネタバレなので未見の方は飛ばして下さい!! >>
 後半2人が結ばれるシーンに関し、評論家諸氏で「あれでブチ壊し」という意見と「あのシーンが素敵」(たぶん小森のおばちゃま)という意見の2つに分かれたと映画雑誌にあり(昔は「スクリーン」「ロードショー」「キネ旬」等立ち読みしてましたっけ)、自分が高校生頃は前者の意見だったのに、長じて後は後者、小森のおばちゃまを断然支持するようになりました。

 IMDbで他の人の感想を覗いてみると、支持派の中に「これと同じくらい心に残る青春映画は「キャリー」のプロムでのダンスシーンだけ」との意見がありました。自分もキャリーを青春映画(一般にはホラー映画)と思っており、ダンスシーンではいつも泣くので、まさに我が意を得たり!でした。

2009年9月23日水曜日

ミスターS&読響の豊饒ブルックナー9番

おえぇ、お得意さまに連敗、落胆の余り1時半過ぎに意識喪失、「LOST」を逃してまたガッカリ。

 連休最終日、秋分の日はぼちぼちのお天気の夏日、職場の入口に毎年咲く白い彼岸花も丁度満開です。朝ゆっくりして午後にコンサート、夕方はなごなご系のテニスと続いた一日。

 昨日発見した自転車に乗った少年盗賊団、もしかしたら単にエコ意識がえらく高い若者達で、レジ袋を見ると撲滅したくなり、懲らしめの意味で回収してただけなのかも、な訳無いか。

 午後聴いたのはミスターSのブルックナー、読響とのコンビでは7番4番5番に続き4度目、今回は実演では余り聴いたことのない9番です。

9月23日(水・祝) 芸術劇場
 スタニスラフ・スクロヴァチェフスキ指揮読売日響 ベートーヴェン PC4番、ブルックナー Sym9番
前半のソロはアンドレ・ワッツ、自分の記憶では(かなり昔ですが)新進気鋭の若手だったのに今や貫禄のたたずまい。後半お目当てのブルックナー、生の9番経験僅少ゆえ他との比較は出来ませんが、透明感のある枯れた響きを予想していたら大間違い、ミスターSは各動機をたっぷりと主張させ、過剰なまでに豊饒な響きを現出、ことに8本のHrが豊麗(うち4本がワーグナーチューバに持ち替えた第3楽章はややパワーダウン)、Tp、Tbも併せ柔らかくかつ豪壮に鳴り響き、弦もかなりの厚みです。テンポは標準的かやや速め?ただ時々ビックリするくらい速いテンポになる部分も。マーラーかよ!と突っ込みたくなる程Hrのゲシュトップ音を強調していたのと、第3楽章終結部の少し前での頂点部の咆哮がすごーく長かったのが印象的。

 明日はサントリーなので更に鳴り響くんじゃないでしょうか。そのスタイルの是非はともかく、(個人的にはブルックナーに思い入れは無いため)オケの分厚い響きを単純に楽しみました。来春の8番も聴いてみたくなってきました。

 コンサートからダッシュで向かった夕方のテニス、文京区営のコートなのに、何故か隣の面で往年の名プレーヤー、(左利きの)渋谷選手がプレーしており、少し緊張してしまいました。

2009年9月21日月曜日

西本&ロイヤルフィルの豪快マーラー5番

 ローテの谷間で相手がルイス、それで先行されて勝てるなんて望外の喜び、何とか3タテは免れました。

 曇りがちで気温も25度に届かず、早起きして昼過ぎまでは東京で練習、都内ではもう枯れている彼岸花も。夜はコンサート、開演前の夕刻サントリーホール前広場のオープン席にいると寒さすら感じてくしゃみ連発でした。

 聴いたのは西本女史&ロイヤルフィル、同オケを聴くのは初めて(か2度目、20年程前アシュケナージでハーリ・ヤーノシュを聴いたかも)で、ロイヤルフィルでマーラーが聴けるなら、と入手作戦開始、無事最安席(7千円とやや高めの設定)を直前GET、しかもRDブロックです!

 RAじゃなくてRDに最安席があるのも驚きですが、ヤフオクでは音のバランスの悪いPブロックよりかなり安く入手出来たのも驚き、やはり客層が少し違うかも、ならば先日と同様の傾向があるかと、Pブロック前3列を双眼鏡でチェック、約60人中、男性客はたったの10人でした(笑)。

9月21日(月・祝) サントリーホール
 西本智実指揮ロイヤル・フィル ワーグナー トリスタンとイゾルデより前奏曲と愛の死、マーラー Sym5番
 トリスタンは開始から緊張感たっぷり、弦はそこそこ程度のボリュームながらいい響き、6本のHrがよく鳴って頂点での迫力(特に愛の死)はかなりのもの。Tp5本、Hr7本と更に増えたマーラー、相変わらずHrは豪快に吹きまくっており、その迫力は過去同曲最高かも。TpソロとHrソロはさすがブラスの国、また弦ではチェロがよく鳴ってました。西本は中庸のテンポでマーラーっぽいアクは無く、旋律を歌わせる傾向(特に緩徐部)でテンポの揺れもその延長上、そして強奏部では思いっきりよく吹かせ、叩かせます。よって最初の2楽章でエンジン全開状態、一方第3楽章中盤、ピッツィカートで始まる部分でのひなびた表情(各ソロの妙技)と第4楽章回帰部のしみじみとした歌いっぷりも印象的。やや勢い任せの感もあり複雑な部分では乱れたりもしましたが、これだけ豪快なサウンドを聴ければ満足。また終楽章の途中で棒を飛ばすハプニング、ただそのせいで手の表情がより細かくなって良かったかも。勿論ラストは大噴火です。

 先日の東響との2番に比べると、遥かにやりたいことが出来たんじゃないでしょうか。一流のオケに思いっきり吹かせれば、やっぱ凄い音響になるものだと改めて感服。

2009年9月20日日曜日

涙のケ・セラ・セラ - 山田英津子さんのソプラノ

 あーあ、直接対決第2ラウンドも負け、谷間が続くだけに苦しい…。

 昨夜VPOから帰ると、何故かCS-PCMのラトル&BPOのザルツブルク・イースター音楽祭公演の留守録がスタートしてません(涙)、原因は謎、どうやらラトル&BPOとは縁が無い(2009/8/27)様で…。

 その後はプエルタの個人TTテキストライブに燃え、次に「ER」の「おいおい」ってところでの第12シーズン終了に(いつもながら)呆れ、更にインディ・ジャパンを観ていて沈没、目が覚めたら軽く風邪をひいてました。

 台風の影響か少し風はありましたが爽やかな晴れ、寒かった昨日より気温も上がって夏日が戻りました。まずは0.5kg減量に成功、勘違いで練習場所が無く、出張中に留守録してあったビデオを消化したり、留守録しきれなかったドラマをVeoh補完したりと、まったり過ごした一日。

 Veoh視聴した「ブザー・ビート」、北川景子の担当する2ndVn(たぶん)のパートを浮き立たせて本番のドヴォルザーク「弦セレナード」を聴かせる演出にはぐっときました。

 後は昨日あったことから、まず朝、地元に帰るつくばエクスプレスに乗る際に買った伊藤園のカフェオレ、以前の乳固形分4.8%(牛乳分40%程度に相当)の乳飲料&無香料から牛乳分20%のコーヒー飲料&香料入りへと激しくランクダウン、ショックです…。

 あと昨日午後に行った渋谷タワレコのインストアライブ、聴いたのは山田英津子さんのソプラノ、ヘンデルからA.L.ウェッバーまで、最近発売のCDから数曲を披露、遥か高みへと抜けるような美しい高音でした。また最後の「ケ・セラ・セラ」は思い入れのある曲らしく、歌詞の内容をご説明なさっている時、目が少し潤んでおられたようで、涙腺の弱いこちらもついもらい泣きでウルウル。

 後で調べるとこの山田英津子さん、あのヤマカズのお嬢さん!とのこと、それにしては若い、あ、いや、遺伝子って素晴らしいですねー。

 明日は西本&ロイヤルフィルのマーラーです!

2009年9月19日土曜日

メータ&VPOの英雄の生涯

 むむむむ、直接対決第1ラウンドを能見で落としたのはちょっと痛いかも。

 朝新宿に到着、高速バスを降りると爽やかに晴れてますが寒さすら感じます。地元に戻るとツクツクボウシばかり元気よく鳴いてます。一風呂浴びて体重計に載ると、懸念通りこの出張で2kg増!連休中は要厳戒態勢です。

 メールの整理をして再び東京へ、一日分の食料として購入したパンと牛乳(計200円弱)を入れた袋を自転車のハンドルに掛けておいたら、数分停車してる間に盗まれてしまいました(涙)。茨城も意外と物騒です。ま、自転車が残っていただけでラッキーとしましょう、例によって鍵は掛けてなかったので。

 東京ではまず渋谷でインストアイベント、ただ本日は盛り沢山なので明日に回します。

 夕方は滅多に聴けないウィーン・フィル、しかもテニス仲間の奢り! 敢えて詳らかにはしませんが、自分がコンサートに出す限度額の3倍はするチケット、持つべきものは太っ腹な友人です。

 最安席以外で、つまり正面側の席でVPOを聴くのは初めての経験なのでわくわくです。

9月19日(土) ミューザ川崎
 ズービン・メータ指揮ウィーン・フィル R.シュトラウス ドン・キホーテ、英雄の生涯
オケは対向配置で弦バスが左端、ただ金管はいつも通り左からTb、Tpと並ぶ独特の配置でHrは右奥、またコンマス(コンミス)が女性でビックリ!昔はオケ全員が男性だったのに。前半はドン・キホーテ、Vcソロは自前のタマシュ・ヴァルガ、Vlaソロは前に出ないの?と思ってたら、確かに出番は思ったより少なめ、実演は初めてなのでよく判りませんが、弦セクションの切れ味と美しい響きはさすが。
 後半の英雄の生涯でコンマスは男性に交替、冒頭などかなり速めで全体的にもやや速め、メータは滑らかな棒で細かい指示は少なくかなりオケ任せ、そのせいか弦の潤いある響きを活かした音の入りや切り方が独特で効果的、Vnソロはやや個性的、ブラスでは9本揃えたHrが豪快な鳴りでソロも見事、TpとTbはやや大人しめながら要所のTpハイトーンはバッチリ、全体としてバランスの取れた演奏、芝居っ気はバイエルン国立管との同曲(2005/9/20)より少ないながら、VPOらしいサウンドが聴けて満足。アンコールはJ.シュトラウスのワルツを1曲、オケはもう1曲ポルカでもやりかねない勢いでしたが今日はここまで。

 開演前のひと時、ミューザの地下にあるマックの無線LANサービスを使い、出張の間フォローしていなかったプエルタの数ステージをテキストライブで一気に補完、エヴァンスがまたパンクし、落車の影響かヘーシンクが後退、そして今夜はこれからクライマックス、個人TTです!

2009年9月13日日曜日

キラキラデュオ - Double Female Orchestra

 昨夜のプエルタ、パンクが可哀想だったエヴァンス、例によって最終的には総合2位か3位だろう、と思ってましたが、それも難しいかも。

 いい感じに晴れて気温も30度弱まで上昇、今朝構内でもう狂い咲きのツツジ(2007/10/5)を発見、ますます咲く時期が早くなってます。またセミの声は激減、殆どツクツクボウシだけの感じです(涙)。

 朝から昼過ぎまではしっかり練習、足腰が弱っているのか練習試合で思いっきりコケて、手の甲と膝を擦りむきました。早速キズパワーパッド(湿潤療法、2009/7/24)貼ってます。

 午後は渋谷タワレコでインストアイベント、聴いたのはDouble Female Orchestra(略してDFO)、キーボード(寺田志保)とVn(楢村海香)の女性デュオです。

 お二人はキラキラしたラメ(スパンコール?)で覆われたノースリーブ&ミニスカ、というポップないでたち、披露してくれた5つの曲もクラシックと言うよりポップス系、ただオリジナル曲でもラフマニノフのPCやパッヘルベルのカノンなど有名曲の主題が素材として使われていました。

 また使用していた電子Vn?は共鳴箱が無く、ほぼ弦とフラットしかない代物、「これがエレキヴァイオリンかぁ」と思っていたら、サイレントVnなる名前があるとのこと。トークや手拍子もあって楽しい30分でした。

 これからモンツァ、ほぼ同じ時間にプエルタ中盤のクライマックスです!

2009年9月8日火曜日

古典再訪その4: クイーンのダイイングメッセージ - エラリー・クイーン「シャム双子の謎」

 朝玄関を出るとキンモクセイの香りがしました。(例年書いてますが)子供の頃は好きだったこの香り、今は「夏は終わったぞ!」と声高に主張しているみたいで苦手です。

 台風の影響か晴れたり霧雨が降ったりとやや不安定な天気、でもたまに射す陽光にはまだ夏の力強さが残っています。また今夕も虫の大合唱が凄いです。

 ふた月ほど前のこと、読みたかった北村薫「ニッポン硬貨の謎」を100円の棚で発見、すぐ読もうと思ったら、何と前半はクイーン「シャム双子の謎」の詳細なアナリーゼになっているとのこと、しかし内容を余り覚えていない…。

 この「シャム双生児」、子供用にリライトされたものと、創元推理文庫版は(ずっと前に)読んでますが、比較的新しい訳の早川文庫版は未読、って訳でそれを古本屋でGETして復習しよう、と思い立って探すことひと月、なかなか見つかりません(涙)。

 それで仕方無く手持ちの創元版でガマンすることにし、お盆に帰省した際、紙魚の跋扈する本棚から発掘して先週末再読を完了しました。

シャム双子の謎 エラリー・クイーン
 山火事に取り囲まれた山荘に迷い込んだクイーン親子の前に起こる殺人とトランプによるダイイングメッセージ、犯人特定の論理はややスマートさに欠けますが、シンプルながら巧いプロットとトランプに関するちょっとした考察はさすが、そして何より山火事そのものが最大の主役で、その点が他の国名シリーズと一線を画すサスペンスフルな魅力となっています。

 因みに国名シリーズの邦題に関し創元は「○○の謎」、早川は「○○の秘密」で統一しており、本作の創元版は「シャム双子の謎」でハヤカワ版は「シャム双生児の秘密」、個人的には「シャム双生児の謎」というタイトルが一番しっくり来るのですが。

2009年9月5日土曜日

チェリストにして料理家 - 大前知誇さんのチェロ

 昨日気になったニュース: 「破天荒」は豪快で大胆? 40代以下、7割超が誤解
「誰も成し得なかったことをするという意味の故事成語「破天荒」を、40代以下の人の7割超が「豪快で大胆な様子」だと誤解している」とのこと。え、俺40代なのに、間違えてるし…。他に記事にあった言葉では、「采配を振るう(誤)」も間違えてました。正しくは「采配を振る」だそうです。

 今日は1週間振りによく晴れて夏っぽい陽気、気温は惜しくも30度に届かず、例年夏の終わりに出てくる謎の蕁麻疹(発疹、かぶれ)がもう右腕に、夏が終わるようで淋しい…。

 朝から昼まではみっちり練習、お盆の帰省や出張があったのでほぼ1月振りか、右腕がつりそうになりました、情けない…。

 お昼過ぎ、練習を早めに上がって昼飯代わりのグロ氷(2005/7/31)へ、今年は冷夏のせいでまだ2度目(たぶん)、その後は渋谷のタワレコでインストアイベントです。

 聴いたのは大前知誇(ちか)さんのチェロ、ヨーロッパでのチェロ修行の傍らフランスで料理の研鑽を(資格も)積んでおり、音楽と料理をミックスしたイベントを展開中だとか、最近発売のCDからバッハを4曲、ストレートな表現で聴かせてくれました。

 目の前でチェロを聴いたら「ジェレミー」が観たくなってきました。実はドイツのホテルでダウンロード済み。

 地元に帰り着いた夕方、西の空にはほぼ円くなったお月さんが上がってきました。最近は6時を過ぎるともう暗くなってくるのが悲しいです。

2009年9月4日金曜日

古典再訪その3: クイーンのミッシングリンク - エラリー・クイーン「九尾の猫」

 11安打で2点(涙)、でも、まあ、欲張らず2勝1敗ペースでいいでしょう。

 連日の曇り&25度割れ、そして西日本との気温差10度も同じ、今夕も虫の声は凄いです。近くの遊歩道にはどんぐりの実が一杯落ちており、既に秋っぽさを感じます(涙)。

 本日は同年に刊行された古典再読シリーズのラスト、クイーン後期(中後期?)の傑作にしてミッシングリンク物の金字塔、「九尾の猫」です。

 初読の際、他のクイーン作品と違ってどうにも犯人を論理で推定するための手がかりが見当たらず、動機で推定した記憶があります。その辺りに注意して再読、ちょうどドイツ出張の頃に読みました。

九尾の猫 エラリー・クイーン
 ニューヨークを恐怖に陥れる無差別(と思える)連続殺人に、一度探偵を辞めたエラリーが挑みます。全編重苦しいと思っていた記憶よりも軽めのタッチ(勿論初期作とは比ぶるべくもありませんけど)でした。
<< 以下微妙にネタバレかも、未読の方はご注意下さい!>>
 ただ再読しても論理的に犯人を指摘するロジックは発見出来ず、もしそうだとしたら、本作はクイーンが書いたからこそ高く評価されているのであって、同内容でサスペンス系作家が書いたとしたら、所謂「後期クイーン問題」で悩む姿のインパクトも無いので、名作とはされなかったのでは、という気がしてきました。

 「後期クイーン問題」と云えば、初読時に理解不能だったセリグマン教授の最後の言葉、再読してもやはり判らず、俺って、やっぱアホ?

 かなり昔にこれの映画化作品(邦題は「青とピンクの紐」<'71>)を観ましたが、余りいただけなかったと記憶しています。寧ろクイーンの映画化で気になるのは「十日間の不思議」、O.ウェルズやA.パーキンスが出ているらしく、いつかは観てみたいものです。

 ともあれ、(ネタバレがあるので)その「十日間の不思議」を読んだ後に読んで欲しい作品です。

2009年9月3日木曜日

古典再訪その2: マクロイのスーパーナチュラル - ヘレン・マクロイ「暗い鏡の中に」

 3ゲーム差、はっきり背中が見えてきました

 西日本では真夏日だというのに、こちらは今日も曇りがちで夏日に届かず朝晩は10度台、夕方外に出た時、虫の声は半端じゃありませんでした。

 朝のTVで「虫はワニと同様変温動物、そのため気温が高い方がよく動けて鳴き声も激しくなる」と言ってましたが、この涼しさであの鳴き声はどうも解せません。

 本日は1949年刊の古典再読の第2弾、オカルト系ミステリーの金字塔「暗い鏡の中に」、これは大のお気に入りで、海外作品でベストミステリーを10作挙げよ、と言われればたぶん入りそうな位。

 ただこの作品、文庫裏のあらすじが既にネタバレ、とも言われてますので、いきおい感想もすぐそうなりますのでご注意を。

暗い鏡の中に ヘレン・マクロイ
 謎の理由で解雇された女性教師を助けるべく出馬したウィリング博士の前に起こる、超常現象としか思えない殺人、オカルト系本格の名作です。
<< 以下バリバリのネタバレに付き未読の方は飛ばして下さい!! >>
 ドッペルゲンガーをテーマにした内容の不気味さと、シンプルながら鮮やかな手がかりは見事、本作をを読んで以来、「レモン・ヴァービーナ」という単語が(それがどんな香りか知らないまま)頭にこびり付いて離れなくなっています。

 ただ再読してみると伏線によっては余り公明正大とは言えない部分もあり、昨日の「ジェゼベルの死」とは反対に、再読で少し評価が減じました。

 ともあれ、三津田信三「厭魅の如き憑くもの」を読む前に是非読んでおいて欲しい作品です。

2009年9月2日水曜日

古典再訪その1: ブランドのアクロバット - クリスティアナ・ブランド「ジェゼベルの死」

 4ゲーム差、僅かながら背中が見えてきました。

 晴れは2日と続かず、気温も25度に届かない低温に逆戻り、セミの声もすっかりトーンダウンです。寒さすら感じる宵の口、一時的に雲が晴れて覗いた夜空では月と木星がランデブーしてました。

 知人に貸すため帰省時実家で手に取った数冊の古典、ブランド「ジェゼベルの死」、クイーン「フォックス家の殺人」「九尾の猫」、マクロイ「暗い鏡の中に」、ふと見返しの出版年を見ると、4冊の内3冊まで(ジェゼベルの死、九尾の猫、暗い鏡の中に)が何と同じ出版年(1949年)です!

 何となくこの暗合に運命を感じて1冊読み始め、同年出版の3冊をつい全て再読してしまいました。今日はその中から。

ジェゼベルの死 クリスティアナ・ブランド
 衆人環視の舞台上で起きる不可能殺人にコックリル警部が挑みます。初読の時は分からなかったのですが、2人のシリーズキャラクター、コックリル警部とチャ-ルズワース警部の初競演という面白味も。メイントリックを覚えていての再読でも、やはり本格の極北に位置する名作と感じます。
<以下ネタバレに付き未読の方は飛ばして下さい!!>
ブランド作品に多い目くるめく多重解決の構成は、真相はどれでもいいじゃん、と思ってしまう弊を孕んでいますが、その中では本作が1番すっきり感がある気がします、首切りの必然性、という点で。

 これまた初読時にはその有難さに気付いてなかったのですが、巻末解説(早川ミステリ文庫版)は山口雅也です!