2010年6月4日金曜日

収束する不条理の夏 - 道尾秀介「向日葵の咲かない夏」

 今日もよく晴れて連日の夏日、週末もこれが続いて欲しいもの、ただ軽い夕立があり、気温が下がりました。

 今クールのドラマで個人的イチ押しはぶっちぎりで「トラブルマン」、期待していた「東京リトル・ラブ」はさすがにこま切れ過ぎて焦点定まらず、それを考慮したのか今週の放送は復習に終始してます。

 もっと期待外れなのは同じフジの「月の恋人」、3番煎じの主題歌といい内容といい、かなりつまらない方に属する感じ、とても今をときめく道尾秀介原作とは思えません、それでもリン・チーリンの美貌で見ちゃってますが。

 その道尾作品は自分の中では今年のテーマの一つ、ただどうしても処女作が古本で見つからず、我慢出来ずに事実上の出世作である第2作から読むことにしました。

向日葵の咲かない夏 道尾秀介
 ペットの連続惨殺事件と同級生の謎の死体消失に小学生の主人公が巻き込まれるのですが、すぐに不条理劇の如き展開になります。数々の不審な点や種々の伏線が一気に収束する終盤は凄いの一言、噂通りの傑作でした。これ以上ネタバレせずに書けそうに無いので以下はご注意下さい。
<< 本作および中西智明「消失!」、京極夏彦「姑獲鳥の夏」を未読の方は飛ばして下さい!! >>
 すぐ思い出したのは中西智明「消失!」、ただ普通の本格と思って読んでいたので見破りやすかった「消失!」と違い、本作はS君が蜘蛛に生まれ変わって喋り始めた時点で何でもあり?と思って思考停止、SFミステリーや「生ける屍の死」、そして西澤保彦の諸作の様にある特定のルールの下での論理、という見方が出来ることに気付きませんでした。また、1人称記述と3人称記述が交じっていたり、主人公の名前がミチオ(道尾)だったりする時点で本格作品における1人称記述問題がテーマであることに気付くべきで、実際著者は「姑獲鳥の夏」に影響を受けたそうです。

 「月の恋人」も最後にトンデモない仕掛けが待っていたりして。

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